アクセス数が、いきなり1,563。うれしい数字が出たとき、まず見るのは合計の欄ではありません。今回わかるのは、たったひとつ——アクセス数は「何件か」より「どこから来たか」を見る、ということです。
「アクセス数8件」で大喜び——でも、ほとんど自分だった

エミリーの絵を並べたブログを公開してから、何日かたった朝のことです。ニッシーは、管理画面に「アクセス数」という欄があるのを見つけて、朝からまったく落ち着きませんでした。
「山くん、見て! 8件や! 昨日より増えてる! 俺のブログ、そろそろ世界に見つかりはじめたんちゃうか!」
のぞきこんだ山くんは、こらえきれずに笑いました。
「ニッシー、落ち着き。その8件のうち、6件くらいは、ニッシーが自分で開いた数やで。」
「え、どういうこと? 俺が見た分も、入ってまうんか。」
アクセス数を数える仕組みは、お店の商品につけた数取り器のようなものです。手に取ったのが誰なのかは気にせず、棚から一つ取られるたびに、かちり、と一つ増えるだけ。ブログでいえば、記事のページが一枚ひらかれるたびに、一つです。ですから、書いた本人が自分のブログを開いても、きっちり一つ増えます。書き直しては確認、写真を入れては確認。それを何度もくり返した朝は、それだけで数字が八つになります。
そこで、いちばん最初にやることが一つあります。アクセスを数える道具には、たいてい「自分のアクセスは数えない」という設定がついています。設定の画面をひらいて、自分のパソコンを覚えさせておくだけです。ただし、これはパソコンごとの約束になっています。別のパソコンから開けば、また一つ数えられてしまいます。見るための機械が増えたら、そのつど登録しておきます。
自分の分をのけると、この朝、外から来たのは二件だけでした。商店街の五人が「ブログ見に行ったで」と声をかけてくれた日でも、二件です。数字は、おせじを言ってくれません。夜まで数えても、自分の分をのぞいた外からの数は、ぜんぶ合わせて十二件。それが、このブログのいつもの一日でした。
昨日まで12件。それが、いきなり1,563

何日かたった昼すぎ、ニッシーの家の電話が鳴りました。エミリーです。声が、いつもとちがいます。
「ニッシー、たいへん。数字が、こわい。すごく、増えてるの。」
山くんも誘って自転車を飛ばすと、パソコンの画面には、見たこともない数字が出ていました。1,563。
「なんで? 昨日まで、12件だったのに。」
「わたし、そんなに、押してないの。」
ニッシーは、まず、教わったばかりのことを疑いました。自分たちの分が入っていないか。けれど、千五百回ぶんの開け閉めなど、できるはずがありません。となると、外から来た数です。
ここで初心者がいちばんやりがちなのは、その数字を何度も数え直すことです。1,563。もう一度見て、やっぱり1,563。これは、いちばん意味のない見方です。数がいくつなのかは、もう分かっているからです。分かっていないのは、その人たちが「どこから来たか」のほうです。
理由の分からない数字は、道ばたで拾ったお金と同じで、明日どうすればいいのかを、何も教えてくれません。逆に、入ってきた道さえ分かれば、「ここは大事にしよう」「ここはもう増えへん」と、次の一手が決まります。ですから、数字が動いた日にひらくのは、合計の欄ではありません。「どこから来たか」がまとめてある欄です。アクセスを数える道具には、この欄が必ずあって、画面には「参照元」や「集客」と書いてあります。来た人が、どの道を通って来たかが、多い順にずらりと並んでいます。
ニッシーは、その欄をひらきました。
数字が急にふくらんだ理由は、いつも「外」にある

いちばん上に並んでいたのは、一本の動画でした。そこをたどっていくと、海外でたくさんの人が見ているチャンネル「たらこTV」にたどり着きました。画面の中で、スティーブたらこが、静かに話しはじめます。
「これは、すごい。」
ひと呼吸おいて、こう続けました。
「わたしは、これを世界に見せたい。」
それだけでした。エミリーは、しばらく声が出ませんでした。
「わたしの絵……見てくれたの。ほんとう?」
ここで、覚えておきたいことが一つあります。数字が急にふくらんだとき、その理由は、たいてい自分の中ではなく、外にあります。この日、ブログは何も変わっていません。記事も、絵も、置き方も、昨日のままです。変わったのは、外に「一本の道」ができたことだけでした。
こういう、だれかの紹介でどっと人が来ることを、この話では「波」と呼ぶことにします。波は、自分の力では起こせません。来るときは来ますし、待っても来ないときは、いくら待っても来ません。だからこそ、数字の上がり下がりにどきどきするより先に、道を見に行く。順番は、いつもこれです。
「1,563」は人の数ではなく、見られた回数

ニッシーは、サーバーのことを教えてくれた、あのおじさんを呼んできました。おじさんは画面をのぞきこむと、まず一つ、釘を刺しました。
「ええか。この1,563はな、“人”やない。“見られた回数”やよ。」
「え、どういうこと? 千五百人が来たんとちゃうの?」
「ちゃうんや。ひとりの人が、絵を三枚ながめたら、それだけで三回や。朝と晩に見に来たら、それで二回。」
数字には、二つの種類があります。ひとつは「見られた回数」。もうひとつは「来た人の数」。お店でいえば、手に取られた商品の数と、扉から入ってきたお客さんの頭数のちがいです。この日は、1,563回に対して、来た人はおよそ900人でした。同じ一日のことなのに、数字が二つ並んでいます。
「どっちも大事や。けどな、混ぜたらあかん。」
では、来た人を見分けないはずの道具が、どうして人数まで数えられるのでしょう。ここは、そういう決まりだと思ってください。同じパソコンから来た分は、同じ人が来たものとみなして数えています。ですから人数のほうは、あくまで目安です。それでも、この二つを見くらべておくだけで、1,563と900、つまり一・七倍ほど自分を大きく見積もる、という間違いは防げます。
「そんで、ここからが本番や。大事なんは、何件かやない。どこから来たかや。」
おじさんが指さしたのは、さっきニッシーがひらいた欄でした。この1,563回を、来た道ごとに分けると、こうなっています。
- 動画から 1,400
- 検索から 40
- その他(直接ひらいた・お気に入りから) 123
「ほとんど、あの動画から流れてきた分や。ここで“人気が出た”て思うたらあかんよ。ほんまのところは、“あの動画を見た人が、いっぺんに来た”や。同じ1,563でも、中身がこれやったら、明日やることも変わってくるやろ。」
波は必ず引く。でも、検索から来る流れは残る

三日後。エミリーから、しょんぼりした声で電話がありました。ニッシーは、おじさんと山くんを連れて、また自転車を飛ばしました。
「もう、だれも、来ないの……。」
動画から来ていた分は、1,400から、一日30件ほどにまで減っていました。合計も、一日85件ほど。三日前の1,563から見れば、すとんと落ちた形です。
「そらそうや。波は、引くんやよ。あの1,400はな、観光バスが一台とまったようなもんや。どっと降りて、ぐるっと見て、どっと乗って、行ってしまう。悪いことやない。そういう性質のもんや、というだけや。」
そして、おじさんが指さしたのは、落ちた山ではなく、その下で平らに続いている線でした。
「見るんは、こっちや。この、検索から来る40のあたり。これはな、引かへんのや。」
波の日が40。次の日が38。今日が41。ほとんど動いていません。検索から来た人は、紹介を見てたまたま流れてきた人ではなく、自分で「魔法少女 イラスト」などと打ちこんで、探しに来た人です。記事は消えずに、ブログの中に残ったままです。だから明日も、来月も、来年も、同じように探した人がたどり着きます。
「エミリーちゃん。この40はな、もう一つ、ええことを教えてくれとる。波が来る前は、一日12件やった。引いたあとは、85件や。もとには、戻ってへんのやよ。」
波の前、検索から来ていたのは、一日5件ほどでした。それが40になり、そのまま居すわっています。動画で名前を知った人が、あとから自分で名前を打ちこんで、探しに来るようになったからです。波は、引きぎわに、道を少しだけ太くして帰ります。そして太くなった分は、減りません。
「そんでな、もう一つ。あのスティーブさんかて、どこでエミリーちゃんの絵を見つけたんやろな。……たぶん、この細い道やと思うで。」
第3話で、おじさんはこう言っていました。何ヶ月、何年たったあとでも、検索した人が、ふらっとエミリーちゃんの絵にたどり着ける、と。あのとき言った細い道を通って来た一人が、今度の波を連れてきたのかもしれません。
「じゃあ、わたしが見るのは……数じゃなくて、どこから来たか、なの?」
「そうやよ。そこが分かったら、もう大丈夫や。」
バスは待つもの、道は自分で作れる

ニッシーは、しばらくグラフをながめてから、ぽつりと言いました。
「なるほど……。つまり、あの動画は、観光バスやったんやな。どっと来て、どっと帰る。うれしいけど、次にいつ来るかは、こっちには決められへん。」
「ええ筋やよ。ほんで、検索は?」
「検索は……店の前に、細い道が一本できたようなもんや。通るんは一日に何人かや。けど、その道は、俺らが寝てる間もそこにある。記事を書くたんびに、二本、三本て増えていく。……そうか。バスは待つもんやけど、道は自分で作れるんか。」
おじさんは、うれしそうに、何度もうなずきました。
数字をひらいたときに見る順番は、三つで足ります。ひとつ、自分のアクセスを数から外す。ふたつ、これは回数か、人数か。みっつ、どこから来たか。この三つを見ると、明日やることが自然に決まります。動画からの波が大きい日は、そのまま置いておけばよい。検索からの数が少しずつ増えているなら、その言葉に近い記事を、もう一本書けばよいのです。
それと、もうひとつ。一日の数字で一喜一憂しないことです。波なのか道なのかは、一日では見分けがつきません。週や月でならして、はじめて形が見えてきます。
そこで山くんが、銀色のノートパソコンをひらきました。
「ニッシー、その月に一回の見くらべ、Claude Code にやらせたらええで。月の終わりに、その画面の数字を書き出して渡して、『先月と今月で、どこから来た人がどう変わったか、三行でまとめて』て、ふつうの日本語で頼むだけや。増えた道と減った道を、並べて教えてくれる。」
「え、そんなことまでできるんか。」
「できるで。大事なんは、毎月おんなじ見方で、検索から来た数だけを、ちゃんと残していくことやからな。先月より増えてたら、道が増えたっちゅうことや。」
そのとき、電話が鳴った

そのとき、また電話が鳴りました。テレビ局から、エミリーの魔法少女を全国に流れるアニメにしたい、という話でした。
受話器を握ったまま、エミリーはその場でうつむいて泣きました。
「香港のお父さんとお母さんに、やっと、いい報告ができる。」
少し離れて見ていたニッシーが、小さくつぶやきました。
「……よかったなあ、ほんまに。」
山くんが、そっと言いました。
「ニッシー、これも波やで。引いてまう前に、道を作っときや。」
今日のまとめ:アクセス数は「どこから来たか」を見る
今日わかったのは、たったひとつ——「アクセス数は、“何件か”より“どこから来たか”を見る」ということです。
- 数字が動いた日にひらくのは、合計の欄ではなく「どこから来たか」の欄。動画やSNSの紹介で来る波は必ず引くが、検索から来る細い流れは引かずに残り、記事が増えるほど積み上がっていく。
- 「1,563」は人の数ではなく、見られた回数。この日、来た人はおよそ900人。回数と人数を混ぜない。
- その前の下ごしらえとして、「自分のアクセスは数えない」設定を入れておく。パソコンごとの約束なので、見る機械が増えたら、そのつど登録する。
次回は、その「検索から来る細い道」を太くするために、記事のどこに、何を書いておけばいいのかを見ていきます。
WordPressやエックスサーバーの詳しいやり方は、こちらに書いています
この話に出てくる「自分の土地(サーバー)」と「その上に建てる家(WordPress)」を、実際に自分で用意するところは、手順が多くて迷いやすいところです。エックスサーバーの契約からWordPressの設置までを、初心者向けに一つずつ説明してくれている、山くんが過去に作成したブログがあります。私もそれを見て作成したので、少し古いですが、とても役立ちます。ぜひご覧ください。
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